せっかく管理費が削減できても、管理品質が下がったら意味がありません。ここでは管理費の削減をしながら品質も向上させた事例の一つをご紹介いたします。
品質向上の為に必要な事は「管理業務仕様書」をしっかり作りこむことです。何故これが必要かと言えば、管理会社との管理委託契約書の条項は、かなりアバウトで、管理会社のさじ加減一つで、いくらでも管理品質をコントロールできるようになっている場合がほとんどだからです。
これは、多くの管理会社が、国交省の定めた「標準管理委託契約書」に準拠した契約書を使用しており、一つ一つが大きさも立地も住民の自治意識も異なるマンションに対して、個別かつ細部に渡る「管理業務仕様」を定めていないことに起因しています。
管理委託契約の「アバウト」で「管理会社側に都合の良い」事例とその改善後の仕様書の例を挙げてみましょう。
あるマンションの管理委託契約に書かれている植栽管理の項目を調べてみると、
6、植栽剪定…100,000円
植栽の保守 | |
植栽剪定 | 1回/年 |
と書いてあるだけです。
一体、どんな種類の木が何本あって、その適正な選定の時期がいつなのか、どの程度の業務量があるのか等の説明は書いてありません。これでは、管理および委託費が適正なのかどうかは、判りません。
これに対して、当社が管理見直しコンサルティングを行う場合、次のように樹種を調査した上で仕様書を作成し、競争入札を行い、適正な管理をより安いコストで実現します。
種別 | 樹種 | 数量 | 剪定時期 |
高木 | シラカシ | 24本 | 年1回(9~10月) |
ウバメガシ | 9本 | 年1回(9~10月) | |
モミジ | 1本 | 年1回(9~10月) | |
中木 | アジサイ | 3本 | 年1回(9~10月) |
シモツケ | 3本 | 年1回(9~10月) | |
ヒラドツツジ | 4本 | 年1回(9~10月) | |
低木寄植 | サツキツツジ | 17.9㎡ | 管理員にて除草・剪定 |
管理組合にとって、非常に悩みの種である管理費等の督促業務については、ほとんどのマンションが、次のような業務仕様です。よく読んでみて下さい。
一般的な管理費滞納督促業務の仕様書(甲は、管理組合のことです)
管理費等滞納者 に対する督促 |
一 毎月、甲の組合員の管理費等の滞納状況を、甲に報告する。 二 甲の組合員が管理費等を滞納したときは、最初の支払期限から起算して6月の間、電話若しくは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払の督促を行う。 三 二の方法により督促しても甲の組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、乙はその業務を終了する。 |
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滞納後、6カ月間、督促業務を行うと書いてあっても、いつのタイミングで、また、電話、文書、訪問のうち、どの手段で督促するのかは、管理会社の判断次第で良いことになっています。これでは、滞納金が回収できるかどうかは、管理会社の担当者が熱心かどうかで決まってしまいます。しかも、6カ月経っても回収できなければ、後は、管理組合(実際は理事会)で自主的にやって下さいね!と、督促業務を終了できることが書いてあります。
つまり、管理会社は、委託業務上、滞納管理費等を「一定期間、督促する義務」があっても、「回収する義務」はないのです。
これでは、日本一督促が緩い「取り立て」です(笑)から、長期滞納は増えることはあっても、減ることはないでしょう。
これに対して、当社が仕様を作り替えると、
以上、二つの事例を上げましたが、こうした仕様書の作成は、管理委託契約の全ての項目で実施し、例えば定期的に行う「建物・設備点検」には、同行して、どのような点検が行われているか細かくチェックしたり、清掃も清掃時間中に立会い、どんな洗浄液を使っているかまで調べたりするため、最低でも3~6カ月の期間が必要です。
これにより、管理委託契約書は、従来の10ページ程度から、30~50ページ程度となり、管理品質は、従来に比べ、最低でも20%以上アップし、あなたのマンションにジャストフィットした「管理業務仕様書」ができると言う訳です。
この仕様書ができて、初めて複数の管理会社による「競争入札」に進むことができます。逆に言うと、従来の管理委託契約書(仕様書)をそのままにして、現行の管理会社に「安くして」と交渉したり、他の管理会社に変更して、委託費が安くなったとしても、相変わらず、管理業者任せの契約内容である限りは、「安かろう、悪かろう」の管理になるだけですから、気をつけてください。